君のためにチャーハンを作る。
学校のない日曜日には、君は昼ご飯作りをさぼる。
そんな日には、決まって俺が何か作る。
それはカレーだったり、おからの炊いたやつだったり、筍の煮しめだったり、時にはあんかけそばだったりする。
君が笑ってそれを食べてくれるなら、俺は何だって作る。
それが、付き合っていた頃なら全く違和感がない。
しかし今となっては、2人はカップルだの何だのという関係ではない。
君は今六さんの彼女だし、俺はもう君以外と恋愛をする気はないし。
それなのに、日曜日にご飯を作ってくれる人がいなくなったのに(六さんはあんまり料理をしない)、君はやっぱりご飯を作らない。
俺が心配になって君の部屋へ行ったら、笑って、「チャーハン作って欲しいな」。
六さんが見たら怒るなり呆れるなりするんだろうなぁ。
前の彼氏を部屋に入れるなんて、許さないんだろう。六さんは俺を叱るだろうか。だろうな。
それでも君との接点がなくなるのは厭だから、こうしてまた、ご飯を作る。
食べやすい位の大きさに野菜を切って、先に炒めてしまう。
ここで胡麻油を普通の油に混ぜて香りをつける。俺のこだわり。
たまねぎ切るときはやっぱり涙が出た。
甘く甘くたまねぎ炒める。
他に何かチャーハンに加えるものはないかと、勝手に(まぁ昼飯作ってんのは俺だから俺の勝手にしていいか)冷蔵庫を探る。
あっ・・アボガドが大量にある・!
おい、何でアボガドなんだよ!!
「兄貴の好物なんだよ」
何てことないように言う。
さっきからソファでゴロゴロしてる君。
少しだけ眠そうだ。
「酔ったときに絶対いっぱい買ってくるんだ」
アボガドをねぇ。
「そうアボガド。どうやって食べるんだろ」
生でだろ。果物だし。
「そうなの?野菜でしょ?」
抜けた声で抜けたことを言う。
きっと寝惚けているんだろう。
「あたし嫌いだよアボガド」
そうか。
何か意地悪してみたくて、すこし大ぶりに切って一緒に炒めてみた。
びっくりするだろう。
さっき冷蔵庫で見つけたムキエビ(またこれも大量に!)を炒める。
そういえば嫌いだったか。エビ。
まぁ俺が食べるからいいや。
甘いことを考えて、少しニヤけて、しゃきっと引き締めて、殻を取ったエビを炒めた。
他に何か入れるものはないか。
どうせならもうヤミ鍋(鍋じゃなくてチャーハン、あくまで。)みたいに色々入れてやる。
罪作りな君に、俺と、六さんの報復。
君をどうしても愛してるんだよ。
君が好きで好きで好きで好きでどうにもならないんだ。
諦めろなんて、絶対、言われたくない。
君の大好きな焼き鳥(冷凍の)を少し入れてみた。
「ナカジ」
何。
「できたら起こしてね」
もうすぐできるけど
「じゃぁ起きてる」
そうは言ったものの眠そうにしている。
何を考えて、何を夢見ているんだろう。
もう俺には知ることはできないけれど。
キミハイマデモ ボクノコトヲ アイシテマスカ
うれしそうな顔でチャーハンを食べる君を見ながら、堪えてた涙が伝った。
行き場のない俺の感情は、どこへ、収めりゃいいんだろう。
罪だらけの君はまたきっと日曜にはご飯を作らないだろう。
香ばしい炒めた油の香りが鼻についた。
幸せは、きっとこんなときに感じられるものなのだろうけれど、今の俺には、悲しくて、淋しすぎたんだ。
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♪ボクチャーハン/スムルース
クッキングキュン デッドエンド クライ
060226 吉野耕助
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