まだ夜が明けない。
 冬の寒さに堪えながらナカジはじっと待っていた。
 羽織を着ているとはいえ和服は冷える。
 下駄を履いた足袋の中の親指が芯から体温を失っていく。

 あちこちで笛の音や琴の音がする。
 どこかの屋台から甘栗の焼ける匂いが流れてくる。
 しめ飾りのしてある鳥居の下で、じっと待っていた。

 「ナカジーっ」

 カラリカラリ。
 可愛らしい木の音を響かせてがやってきた。
 淡い紅の振袖を着ている。
 しばらくぼぅっと見とれてしまった。
 それからはっとして右手を挙げた。

 「ごめんね遅くなって・。着付け手間どっちゃって」

 ナカジは頷いて、の冷えた手を取って歩き出した。

 「案外人多いね」

 すれ違う人たちは皆正月に浮かれていた。
 ナカジはそんな人等を気にせず歩いていく。
 半歩後ろをがついていく。

 「有象無象だ」

 「そんなこと言うなよぅ」

 砂利道を抜けて、屋台の通りを抜けて、甘酒の前も過ぎて。
 2人で歩いていく。

 「甘酒・・。」

 が呟いた。
 途中で御手洗で身を清めていく。
 水の冷たさに驚いた。

 「俺神頼み嫌い」

 ナカジが言った。

 「神っつぅとあいつ思い出すし」

 MZDのことだろう。

 「まぁまぁ」

 賽銭を投げる。
 のは跳ね返って賽銭箱に入った。
 ナカジのはストレートに賽銭箱へ。
 2人で手を合わせた。

 「(ナカジとずっと一緒にいられますように。あと健康で過ごせますように。皆で楽しくやってけますように。)」

 「(と俺以外の人間がいなくなりますように)」

 ナカジがちらりとを見た。
 一心に何かを祈っている。ナカジには知れない。


 それから2人でおみくじをひいた。
 ナカジは末吉。は大吉。

 「こんなものあてになるか」

 怒ったからが笑った。











 下駄の音をカラコロ云わせて2人で歩く。
 手を繋いでいく。

 「ナカジ」

 「何」

 「今年も一緒でいようね」

 ナカジは真っ直ぐ前を見ていた。

 「解ってる」

 2人、手を繋いでいく。












 ---------------------------------------

 最近初詣に和服の人が増えましたね。
 キモノブームのせいでしょうか。

                        060104


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送