【1】 師弟愛


 「・・前から思ってたんだけどさ」

 落葉散る校庭で、アンプラグドのギターが唸る。

 「ナカジって何でギター弾くの?何でマフラーなの?」

 ナカジはギターを止めずに訊き返す。

 「何でいきなりそういうこと訊くわけ?」

 「えーだってナカジなら何でも弾けそうだし」

 「俺はギターしか弾けないんだ」

 「何で?」

 ナカジはすごく嫌そうな顔をして、それからギターを止めた。
 はるか彼方へ言うような声で、ぽつりと言った。

 「師匠が死んだから。」

 「…何の」

 「ギターの。師匠。」

 言葉を切るたびに左足でざっと枯葉を蹴散らした。

 「・・ごめん」

 「構わねぇけど。それだけ」

 「言わなきゃよかった」

 「別にいいって。…師匠が事故で脳死んなって、ギター弾けなくなったから、俺が代わりに弾いてるだけ」

 「師匠が好きだったんだね」

 「腐れ親父だったけどな。」

 「あたしも、」

 ナカジはまたギターに向かっている。

 「あたしも、ナカジのそんな人になりたいな」

 「・・もう、なってる」

 言った。







  【2】 アイスクリームが溶けて


 ナカジは怒っていた。
 が、いつも自分の隣にいるはずなのに、いない。
 だから怒っていた。
 面に出してプンスカ怒るというのではなくて、イライラが見えない気体のように噴出しているのだ。

 「ナーカージーッ!!」

 呼ばれた方を振り向いたらが息を弾ませて走ってきていた。

 「・・何してたんだよ」

 「ごめんごめん、コンビニ行ってた」

 「何しに」

 「アイス買いに。ハイナカジの分」

 ぱっとバニラアイスを差し出した。

 「いらね」

 「えー溶けちゃうよ、食べてよナカジ」

 「いらねぇって」

 「あたしがお腹壊してもいいの?」

 「勝手に買ってくんなっての・・」

 しぶしぶナカジは封を切った。
 甘ったるい香りがする。
 は雪見だいふくだった。
 二人並んでアイスを食べた。

 「(何つぅか・・幸せ、だな)」

 と、思えた。









  【3】 逃げ惑う


 「一回だけあたしからキスしてもいい?」

 「ふざけんなァアア!!離せ!!!」

 は女の子とは思えない力でナカジの学ランを引っ張っている。

 「だっていっつもナカジからじゃん、あんまりしてくんないし。あたしつまんないよ」

 「俺はつまるから!!はーなーせェエエエエ!!!」

 ばたばたともがくナカジ。
 は何とかナカジの顔を近くまで引き寄せた。

 「一回だけ。いいでしょ?」

 「・・頼むからやめてくれ・・!!!今度からはもっと沢山してやるから!!!!!」

 「ぇー…ホントに?」

 「本当だから本気でやめろ!!!!」

 今 は 授 業 中 だ ! ! ! !









  【4】 colder than


 「あーっっ!!!」

 声を上げたのはの方。

 「何」

 ナカジはまたギターだ。

 「こないださ、何でマフラーしてるかって言ったのにまだ答聞いてないよ・!!」

 「…忘れろ」

 「やだ教えてよ!」

 食い下がったに苦笑いを抑えながら

 「冷え性、だから。」

 「・・」

 「何つまんねぇみたいな顔してんだよ!!!」

 「…普通すぎ」

 「………。」









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 ベタベタ

                        051206

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