すごいスピードでネックを走る5本の指
 コードを叩きつける目にもとまらぬ3フレット





 「……。」

 ぼぅっと、ギターを眺めた。
 つるりと光るナカジのギター。

 「あたしギター下手なんだよなぁ」

 呟いて、ネックに手を掛けた。
 丁度よくナカジは居ない。
 一度弾いてみたかった。
 ナカジの様に。

 知っているコードをゆっくりゆっくり弾く。
 一音一音確かめるように。
 の黒髪が柔らかくヘッドに触れた。


   所詮 突き刺して彷徨って塗り潰す君の今日も
   つまりエンド&スタート
   積み上げる弱い魔法


 声。
 どこまでも遠く。
 君にだけ、伝えたいだけ。

 「・・

 はっとしては顔を上げた。
 コーヒー牛乳の紙パック片手にナカジが立っていた。

 「…あ、ぁああ、ごめんねごめんね、あの、これは、その」

 「構わないけど。何ていうか・・が、歌ってるとこを初めて見た。」

 言いながら、自分の定位置に戻った。
 はギターを元に戻した。

 「・・そう?」

 「もっと歌えよ。楽器ばっかりじゃなくてさ。」

 「ぅーん・・あたしは楽器のほうがあってるし」

 「歌えよ」

 ナカジの眼が真っ直ぐを見ている。
 は戸惑って、一度俯いた。
 ナカジは黙って見ていた。



  透明な声が歌に染まる。



 歌い終えて、目を閉じた。
 ナカジは黙っていた。

 「・・下手でごめん」

 ナカジは、不意に笑い出した。
 可笑しくて堪らなくて、でも乾いていて、ナカジが笑う。

 「何よぅ笑わなくてもいいじゃん」

 楽しそうに笑っていた。
 それから、甘える子供の様にに抱きついた。

 「な・なななナカジ・・?!!!」

 空っぽの教室でも、廊下を部活中の生徒が通っていく。
 は顔を真っ赤にして抵抗して、無駄だと知って目を閉じてされるままにした。
 とても、どきどきしていた。
 ナカジが時間をかけてキスをした。
 それから、言った。

 「やっぱり俺が好きだ。」

 「・・ありがと」

 「もう一回歌えよ」

 「もうやだ。笑うし」

 「俺が弾くから。」

 を離して、ストラップを掛けた。
 それがとても似合っていた。
 その煤けた茶色のギターは、ナカジにしか合わなかった。
 もとからナカジのものであったかのように。

 「歌えよ。」

 何度でも、何度でも
 ループするんだ




















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 ループ&ループ/ASIAN KUNG-FU GENERATION

 初めて聴いた鯵缶は「ループ&ループ」でした。
 確かヤマハのスクーターのCMで。
 すごく鮮烈だったのと覚えてます。
 とても好きな歌です。

                    051127

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