「何でさー」

 「ん?」

 はお茶碗片手にMZDを見た。
 MZDはかちんとフォークを置いた。

 「何でお前はメシんときそんなに楽しそうなんだ?」

 「…楽しそう?」

 「何つーかなー・・嬉しい、楽しい、みてぇな」

 「ふーん…そうなんだ」

 は影の作った三色サラダをばりばり食べた。
 特製手作りドレッシングが野菜によく合っていておいしい。

 「そうなんだってお前、俺は訊いてんのよ?」

 「ぅんー?何でって言われてもさぁ、あたし普通に食べてるよ?」

 そーかねぇ、呟いてMZDはかりかりに揚げた魚の切り身を口に入れた。
 洋食に傾くMZDに影は趣向を凝らしたメニューを作っている。
 が来る日には日本人ののために白飯を炊いてくれる。
 その影はMZDの代理の仕事で今日はいないのだけれど。

 「なーんかな。いいよな、お前は。」

 「どういう?」

 「メシ好きだろ」

 「うん」

 「平和じゃん?」

 言いながらどんどんお皿が空になっていく。

 「MZDはやっぱご飯食べないとだめなの?」

 「べぇつに。俺神だし」

 二言目には「俺神だし」だよねぇ、が言ったらMZDは否定した。

 「じゃぁ何で食べるの」

 「メシ食うのはな、その日その日の燃料じゃなくて神が神であるために食ってるだぁけ。」

 「むー?」

 「要するに現状維持」

 「現状維持」

 「そう。俺はできるなら今のままでいたいわけ」

 「そのままでなくて進むっていうことはしないの?」

 「さーぁ。進むのは意志じゃねぇだろ、自分が必要とすりゃ進むのよ」

 「かっこいいこと言うねぇ」

 「そうか?そりゃどうも。」

 にっと笑った。
 つられても笑った。








 「やっぱさ」

 ブラックコーヒーためらいなくぐいぐい飲みながら言う。
 またもう一杯入れ直してくる。

 「俺とか他の男は、まぁそれも腹立つんだけどよ、お前のそういうとこに惚れるんじゃね?」

 「ぅーん?」

 「うまそうにメシ食うとこ」

 「あたしのいいとこってそこだけなんだ」

 「さーぁ。」

 「え・マジですか?!!」

 「自分で考えな」

 コーヒーをふぅふぅ吹きながら神がソファに身を埋めた。
 身長180センチ超の男がヒザ抱えてソファに埋まっているのが可笑しかった。
 は自分の日本茶をちょっとずつ飲みながら笑った。

 「1コ解答例」 

 「はーい」

 「神が惚れてること」

 「言うねぇ」

 「コーヒー熱ィ」

 「だっていれたてだし。」

 「お前の貰うぜ」

 ぱっとの湯飲みを取った。

 「やーぁ返してよぅ」

 「だぁめ。コレやるから」

 ブラックコーヒー熱々をが飲めるわけなくて、今度はがヒザ抱えて大好きな日本茶減ってくのを見ていた。

 「うぇーんエムの馬鹿ぁ」

 「ドーゾ好きなだけ罵って頂戴な」

 神は温いお茶を思い切り飲み干した。

 「ガキ。エロ。スケベ。アホ。メガネ。サディスト。ダメ男。ノロケ。鬼畜。変態。音楽狂。
  影ちゃんを好き勝手にこき使うダメ神。
  甘党で辛党でよく分からん味覚の暴力男。エロ神。
  その日の気分で冬だろうと台風を持ってくる気まぐれ神。
  あたしが待っててもなっっっっかなかやって来ない時間に疎いダメ男。」

 神は思い切り喉にお茶を詰まらせて咳き込んだ。

 「んだよ、何でそんなにスラスラスラスラ人を罵れんだ。お前のがサディストだろ」

 「全部本当だよ。」

 「まぁ否定はしねぇかなー」

 「マジですか。」

 「あぁマジです。」

 空になった湯飲みが返ってきた。
 は少しだけ冷めたコーヒーを返してやった。

 「ひどいよ」

 「いぃのよ神だから。鬼畜なんだろ?」

 「あーんエムの意地悪ぅう」

 「腹減ったなー」

 「うわっ思きし話そらしてるし!!!」

 「お前も何か食う?」

 「あ、うん」

 「へっへっへ。お前の負け」

 「あぁっ!!!ずるい、何よそれー!!!」

 「話そらされてんじゃん。」

 「ぅうーっ…。」

 悔しがってしょげたの頭をくしゃくしゃ撫でてから神がキッチンに立った。

 「うわぁ珍しぃ!!!エム料理するの?」

 「お前よりは美味いもん作れんだぜ俺は?」

 「ヒドっ!!!」

 「神は万能なのよ」

 「もぉあたしお料理しない」

 「まぁまぁ拗ねんなって。俺はお前の作る飯好きだぜ?」

 MZDが笑った。

 「何食いたい?」

 「えー・・」

 「和洋中お好きなのをドウゾ」

 「えー…。じゃぁ和食で。」

 「ったくよ、日本人だなーお前は。」

 「何よ、日本人だよあたしは!!!」

 「あぁ。日本好きだぜ」

 「ふぅん。エムは中東の方が好きそうだな」

 「えぇ?!!マジで?!!!俺都会派なんだけど!!!!」

 わたわたしている神をは楽しそうに見た。
 平和だった。

 「あーぁ。何で俺コイツに惚れてんだろ」

 「さぁ。あたしのこと嫌いになりましたか?」

 「いーや。むしろ好きだな。」

 「ありがと。」

 「さて、和食っつっても色々だからな、何がいいんだ?」

 「えーっと母の味って感じで。」

 「母の味ねぇ・・。」

 MZDはがさがさと大きな冷蔵庫を漁った。
 ゴロゴロ野菜が出てきた。

 「じゃぁ肉じゃがとキャベツの味噌汁」

 「キャベツ?合うの?」

 「食ってみなきゃわからんねぇ」

 「うん。じゃあエムを信じるとしよう。」

 「任せとけって。」

 夜も遅いのにMZD宅はいい香りと笑い声がした。














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 神は料理できますがめんどいので影任せです。
 とことんこき使われる影笑

 書いてて楽しかったです。


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