ロマンチックなクリスマスなんかちっとも望んじゃいなかった。
去年はクリスマスライブに呼ばれて、その帰りに飲んで飲んで二日酔いして、
その前は風邪ひいてクリスマスどころじゃなくて、
今までいいクリスマスなんてなかった。

なのにさ、

「今日俺ん家でケーキ食わね?」

MZDが言うから、

「行く。」

下心見え見えだっての。
それでも行くわたしはとてもばかだとあとで思った。


バルーンスカートはひらひらゆらゆらして歩いていて気持ちがいい。
さむいことは、さむいね。
だってもう12月終わるし。
白い息がわたしの体から出て行っては掻き消えていく。
街は家々の灯りでなんだかじんわりきれいだ。
今年ももう終わりだな、とか、ちょっと思ったりして。

「お、来たじゃん」

自分のパンプス(冬仕様)のコツコツいう音を聞きながらぼーっとしていたわたしは、MZDが目の前にいるのに気付かなかった。
MZDのモコモコジャケットにぶつかった。

「ケーキまだ買ってねんだ。一緒に買いに行くか」

ぜんぜん準備できてないし。
街のケーキ屋に歩いて買いに行くことになった。

結構有名なパティシエのケーキ屋、カップルでやたら混んでいた。

「うわ」

「あ?」

「なんでもない」

やだな。やだな。
今年はMZDとケーキ食べるけど、1人だし。
カップルじゃないし。
もしそうなら、キラキラするケーキを2人で眺めて、おいしそうだね、とか言ったりするのかな。



「何ボーっとしてんだ?」

「・・してないよ」

「どれがいい?俺のオゴリ」

ガラスの向うでぴかぴかしているケーキ、はっきり言って選べないくらいどれもおいしそう。
いくつか我慢をして、真っ赤なゼリーのかかった苺のケーキにした。
MZDは普通のショートケーキだった。
永遠の少年だ、と思った。


「なー」

「何」

さっきよりまた暗くなった街は、本格的にクリスマス。
わたしたちはゆっくり歩く。
ケーキの箱を持った手が少し冷たい。

「なんでさっきボーっとしてたんだよ」

「・・。」

「なんか不機嫌だったじゃん、なんで」

ニヤニヤわらう。
わたしがなんて言うか分かってるんでしょ。
わかってるくせに。

「さっきのケーキ屋カップルばっかりだったんだ」

「あーなるほどね。今フリーだもんなお前」

「うるさいなぁ」

ほんとは、クリスマスくらい、誰かがそばにいて欲しいんだ。

「さみしいんだ?」

「ば、違・!」


「だったら俺でいいだろ?」


「・・は」

「ロマンチックな最高のクリスマスにしてあげよう」

一瞬目の前が暗くなって、

「俺じゃ不満?」

「不満じゃない」

ロマンチックなクリスマスなんかちっとも望んじゃいなかった。
けど、ロマンチストのせいで、今年のクリスマスはロマンチックになってしまいそうかな。












(街は冬の光でロマンチック飾る/061225)

クリスマスなのでフリーです
よかったらお持ち帰りください
そしたらとてもうれしいです


written by momosuke
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